2024年04月15日
土田滋博士の台湾原住民語資料データベース構築
2017年12月13日
このたび情報資源利用研究センター(IRC)より、『モロッコのベルベル語による民族誌的語り』(中野暁雄著・堀内里香編訳)が刊行されました。
本書の目次は以下の通り。「これから俺は俺たちシルハの兄弟たちの言葉で君たちに話をすることにしよう。俺たちの村は……」といった具合に、次々とテーマに沿った様々な語りが展開していく魅力的な一冊です。
Studia Culturae Islamicae No. 106 Studia Berberi (IV)
ISBN 978-4-86337-257-3
判型 B5判 xx+243頁
刊行 2017年10月
発行 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所
制作 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所情報資源利用研究センター(IRC)
2017年度プロジェクト「中野暁雄著『ベルベル民族誌』のデジタル化と日本語訳の刊行」
本書の入手方法については下記をご参照ください。
http://www.aa.tufs.ac.jp/ja/publications/inquiry
ここでは本書の制作に携わったIRCの小田淳一さんによる本書へのメッセージ《刊行について》を掲載するとともに、編訳者の堀内里香さんにまとめていただいた、本書刊行の経緯や原著の学問的意義、日本語訳の意義、さらに1,200語からなる語彙集を含む117ページに及ぶテキスト《『モロッコのベルベル語による民族誌的語り』刊行に寄せて》(PDF 3.1MB) を掲載します。
文・小田淳一(AA研)
本訳書の刊行に至るまでの経緯については本書の中でも触れられているが,訳者の堀内里香さんから最初に頂いた「はじめに」は非常に長大なもので,それだけでも優に論文1本になるぐらいの量と内容だった。訳文の本体も原著3巻を一冊にしたため大部になったので,過去にAA研から出版された同種の刊行物の構成やその他諸々の事由を勘案して,かなりの部分の割愛をお願いせざるを得なかった。私の方でも刊行に関わった経緯を1ページ程度の緒言にまとめようと書き始めたところ,肝心な点に行き着かないうちに5ページを超えてしまい,結局は緒言を書くことを断念した。どうしてこのようなことになってしまったのかを問い直してみると,それは多分,中野さんが残した仕事の凄さと,中野さん本人の不思議なキャラクターから来ているのだろう。
本書の刊行を巡っては様々な巡り合わせを感じる。情報資源利用研究センター(IRC)が設立された1997年度に原著の最終巻である第3巻が刊行され,20周年を迎えたIRCが「紙媒体」の書籍を刊行するのは本書が最初である。本書の企画を提案して下さった堀内正樹さんは,あちこちのフィールドや研究会や宴席で多分一番長く一緒に過ごしてきた先輩である。大学でフランス文学専攻だった訳者の堀内里香さんがベルベル語についての論文を書いた時に敢えて受け入れたH先生は,私が40年前に通っていた中世フランス語読書会では若手の親分格で色々とお世話になった。中野さんが亡くなられる少し前に,イエズス会の神父が歌舞伎町の雑居ビルに開いた宣教スナックで偶然お遇いした。中野さんは赤ワインを1本注文し,週刊誌をゆっくり読みながらそれを空けてしまった。別れ際に珍しく固い握手をした時に中野さんがいつもとは少し違う笑顔だったのは,私が本書に関わることをその時既に予見していたのではないかと思ったりするが,それはあながち荒唐無稽な話でもない。アラブの占卜表ザーイラジャはマラケシュのスーフィー行者によって創案されたので,中野さんがそれを習得していた可能性はある。
IRCサイトで本書の紹介文を書くよう依頼された際,訳者の堀内里香さんにも書いて頂きたい旨をお伝えしたところ,短いバージョンと長いバージョンを送って下さった。前述の通り,本書の「はじめに」は言わば縮小バージョンであるが,容量の制限がないweb上での紹介という折角の機会なので,長いバージョンを以下に掲載する次第である。
《『モロッコのベルベル語による民族誌的語り』刊行に寄せて》(PDF 3.1MB)