カテゴリー: ピックアップ

仮想現実の利用が可能な視覚資料の保存・公開とその利活用のための基礎的研究

本プロジェクトは、空間情報の保存と利用の新たな方法としてVR技術に注目し、VRコンテンツの作成を通じて、歴史学研究におけるVR技術利用の意義や課題について検討することを目的としています。

 

エジプト・カイロのイスラーム建築の傑作であるカラーウーンの寄進施設のVR(バーチャルリアリティ)ツアーを公開しました。VRツアーでは、建物内部の様子を360度見学しながら、見どころの解説をご覧いただけます。オンライン学習やオンライン観光のコンテンツとして、是非ご利用ください。

 

VRツアー内の各所に置かれた!マークをクリックすると、解説のポップアップが開きます。また、一般の観光客には公開されていない王の棺もご覧いただけます。

 

プロジェクトサイトでは、寄進施設の歴史などの基礎情報をご覧いただけます。こちらは今後、用語集(グロッサリー)や深掘り解説などのコンテンツを充実させ、学習サイトとしてもご活用いただけるように発展させていく予定です。

 

プロジェクトサイト:https://qalawun.aa-ken.jp/

 

VRツアーサイト:https://blog2020.aa-ken.jp/p/qalawun/vrtour/

 

(文責:熊倉和歌子)

 


参考情報:

アイヌ語音声資料の文字化テキスト対応づけと公開

この「アイヌ語音声資料の文字化テキスト対応づけと公開」プロジェクトでは、アイヌ語研究の第一人者であった故田村すゞ子氏(早稲田大学名誉教授、元AA研フェロー)によって採録されたアイヌ語の民話の音声資料と聞き起こしテキストをデジタル化して順次公開しています。ウェブサイトでは、日本語訳が付されたアイヌ語(カタカナ表記、ローマ字表記)を見ながら、ポーズによる切れ目ごとに音声を聞くことができます。2017年度公開分からはテキストの全文検索が可能となっています。

 

21世紀を迎えた現在、アイヌ語母語話者による音声資料を新たに採録することは非常に困難な状況となっています。そのため、現存する一次資料を整え、公開する活動がさまざまな機関で行われるようになってきました。このプロジェクトによって公開されているアイヌ語音声資料はそれらアーカイブの一つです。ほかと大きく異なる特徴として、検索機能を強化し、細かな条件指定による検索を可能としていること、音声資料に関連した田村氏の既刊論文や研究ノート等に残された記述を訳注としてできるかぎり詳細に付していること、「ポーズによる切れ目」を区切りとして示す方法を確立し、談話上の単位を考えるうえでの重要な提案をしていること、などをあげることができるでしょう。

 

(文責:山越康裕)

 


参考情報:

インド・歴史書文献の電子データ化

このプロジェクトでは12世紀半ばにカシミールで編纂されたサンスクリット歴史叙事詩『ラージャタランギニー』の電子テキストを検索機能付きで公開しています。

 

南アジアの歴史を語るうえで、しばしば「史書なきインド」と言われることがあります。この言葉は二つの意味で正しくありません。第一に、古代以来インドでは「ヴァンシャーヴァリー(族譜)」や「イティハーサ・プラーナ(古譚)」と呼ばれるサンスクリット・プラークリット文学のジャンルがあり、定義を広くとるならばこれらも歴史叙述に含めることができます。第二に、この言葉には「インドの共通語」がサンスクリットやプラークリットのみであるという暗黙の前提があり、ペルシア語で書かれた史書は前近代南アジアにおいて多数存在します。

 

ともあれ、サンスクリットで書かれた「王朝史」と呼べるような作品が前近代南アジアにおいて非常に少ないことは確かです。その中でもほぼ例外的な作品と呼べるのが、この『ラージャタランギニー(諸王の川)』です。著者カルハナは時のカシミールの王朝、第二ローハラ朝の王ジャヤシンハに仕えたバラモンの詩人で、1148年から49年頃にこの作品を完成させました。全8章7,826詩節からなり、カルハナが当時参照しえた文献・碑文・遺物など様々な史料を駆使して、カシミールの先史時代からジャヤシンハ王までの諸王朝史を綴っています。文体は優れた韻文で、文学としても価値の高い作品です。

 

本プロジェクトでは、19世紀末に刊行されたオーレル・スタインによる校訂本をもとに『ラージャタランギニー』のテキストをデーヴァナーガリー文字の電子データとして入力したもので、古代・中世南アジア史の第一級史料を研究者が利用しやすい形で公開しています。

 

(文責:小倉智史)

 


参考情報:

『日本語マラヤーラム語辞典』の功績を讃え、著者が Dr. Hermann Gundert Endowment Award(ヘルマン・グンデルト博士基金賞)を受賞しました

5月のピックアップ記事で紹介しましたAA研の高島淳教授、峰岸真琴教授が中心となって編纂に関わった『日本語マラヤーラム語辞典』の功績について、2018-2019年度の Dr. Hermann Gundert Endowment Award(ヘルマン・グンデルト博士基金賞)が、著者のナンビアール氏に対してインド・ドラヴィダ言語学会より2019年6月20日に贈られました。

 

『日本語マラヤーラム語辞典』は、GICAS(「AA研アジア書字コーパス拠点」2001-)において開発したインド系文字の処理技術を活用し、IRCプロジェクトによって構築した電子辞書を印刷体としてケーララ州言語研究所(State Institute of Languages)から2019年3月に刊行したものです。

 

本学ホームページに記事が紹介されました。


参考記事:

 

5月のピックアップ記事:

『日本語マラヤーラム語辞典』刊行記念式典 がインド・ケーララ州 で行われました。
https//irc.aa.tufs.ac.jp/newsmalayalam_kerala.html

 

アジア書字コーパス拠点 GICAS(Grammatological Informatics based on Corpora of Asian Scripts)

http://gicas.jp/

 

IRCプロジェクト:

日本語マラヤーラム語電子辞書(辞書検索システム)

https://www.aa-ken.jp/edic/jmd/

『日本語マラヤーラム語辞典』刊行記念式典がインド・ケーララ州で行われました

このたび『日本語マラヤーラム語辞典』がインド(ケーララ州)から出版され、2019年3月にケーララ州の州都トリバンドラムにおいて刊行記念式典が開催されました。

刊行式典にはケーララ州文化大臣および次官や駐インド日本大使館次席公使他、多数の参列を得ました。『日本語マラヤーラム語辞典』の編纂に中心的に関わった本研究所高島淳教授・峰岸真琴教授も出席し、ケーララ州のみなさまからの賛辞を受けました。

 

 

写真(上)は高島教授が敬意を示すショール(angavastra)を贈られているところ、写真(下)は文化大臣が公使に辞書を贈呈しているところです。(左から3人目がケーララ州言語研究所長のナイル教授、順にラーニ・ジョージ文化次官、順に浅利駐デリー次席公使、バラン文化大臣、著者ナンビアール氏、AA研高島教授、AA研峰岸教授)

 

 

『日本語マラヤーラム語辞典』は、GICAS(「AA研アジア書字コーパス拠点」2001-)において開発したインド系文字の処理技術を活用し、IRCプロジェクトによって構築した電子辞書を印刷体としてケーララ州言語研究所(Kerala Bhasha Institute, State Institute of Languages)から刊行したものです。

 

IRCプロジェクト

日本語マラヤーラム語電子辞書(辞書検索システム)

https://www.aa-ken.jp/edic/jmd/

 

マラヤーラム語 (ISO 639-3 mal) は南インドのドラヴィダ系4言語の一つで、ケーララ州の公用語です。第一言語話者だけで約3500万人(2011年センサスによる)を擁する大言語です。今後インドのIT産業などとの関わりでも一層必要性が増していく言語なのですが、これまで本格的な日本語辞書は存在しませんでした。今回、1500頁を越える辞書が公刊されたのは快挙です!

 

【2019-06-24 追記】著者のナンビアール氏が、Dr. Hermann Gundert Endowment Award(ヘルマン・グンデルト博士基金賞)を受賞しました

チュルク諸語対照基礎語彙

このプロジェクトでは風間伸次郎氏(東京外国語大学教授)が採録したチュルク諸語の基礎語彙を音声付きでデータベース化しています。

 

チュルク諸語は西はアジアの西端にあたるトルコから、中央アジアを経て東はシベリアまで、アジアの東西にまたがる広大な地域で話される言語グループです。モンゴル語をはじめとするモンゴル諸語、エウェン語や満洲語をはじめとするツングース諸語とともにアルタイ諸言語としてとらえられることもあります。風間伸次郎氏はアルタイ諸言語の分岐と形成の過程を探るべく、長年にわたりアルタイ諸言語の調査研究をされており、本データベースは、氏が現地調査により採録したチュルク諸語の基礎語彙を、氏の録音した音声と共に提示しています。本データベースに登録されているデータの採録にあたっては科学研究費補助金「アルタイ諸言語の語彙の総合的集成(15H05153)」などの支援を受けており、本データベースはその成果でもあります。

 

基礎語彙の調査は『アジア・アフリカ言語調査票 下』(1979年, アジア・アフリカ言語文化研究所)を基に行われており、本データベースに登録されているのは、同調査票でA項目とされている200項目です。データベースには、チュルク諸語のこれまでの研究の蓄積を踏まえ、一部の言語については文献で提示されている形式も提示しています。

 

利用にあたってはメニューバーから操作を行うことにより、表示する言語の切り替えを行ったり、検索による絞り込みを行うことが可能で、これにより言語間の対応関係を調べることが可能です。

 

本プロジェクトは2014年度に始まり、現在(2019年1月)も進行中です。2014年度のトゥヴァ語を皮切りに、毎年言語を追加し、現時点で10言語、26変種のデータを収録していますが、今後もデータは追加されていく予定です。今後も継続的にデータを追加していくことで、チュルク諸語の多様な姿をより鮮明に描き出すことを目標としています。

(文責:児倉德和)

 


参考情報: